透明人間の輪郭

紡いだ言葉が私の輪郭になる。

正欲を観た

正欲を観てきた。

”せいよく”の音に引っ掛けて興味を引くタイトルとしておきながら、人間として正しくありたいとする欲を描くというような作品であると予想して観に行きました。

多少のネタばれもあるので閲覧には気を付けてください。

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夏のおわりに流行る曲「若者のすべて」

若者のすべてという曲を知っているだろうか。
言わずと知れたフジファブリックの代表曲である。
2008年にリリースされた曲でありながらもいまだに愛され続けている。
夏になると毎年のようにラジオから流れ、新たなファンを獲得するキラーチューンである。


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私も就活していたころに高速バスの中でしみじみ聞いていた思い出のある曲である。
当時はMP3プレーヤーだったなあ。
哀愁漂うメロディーラインと歌詞は音楽にそれほど造詣の深くない人の気持ちをも掴んで離さない。
色々な方にもカバーされている。ミスチル桜井和寿さんにもカバーされている。


私は歌詞に注目してこの曲を紐解いてみたい。
何気なく聞いてるとなんかエモいなくらいにしか思わない。
夏のピークが去って、何か寂しい。街灯の明かりがともるけど、親元離れた私は一人で誰も待たない家に帰るんだ。今年の花火も最後だ。また夏が終わるなーくらいのそんな感じの曲に思える。

若者のすべて フジファブリック 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

僕が引っかかるのは「最後の花火に今年”も”なったな、何年たっても思い出してしまうな。」という表現です。
最後の花火は毎年やってくるのに、今年の最後は特別で何年経っても思い出してしまうと思っている。なぜか。

僕はこの曲は初恋が夏休み中に終わった曲だと思っている。
若者の”すべて”とは”初恋”のことだろうと。

「真夏のピークが去った」とは、実際に夏のピークが去ったことと自分の心の盛り下がりを重ね合わせていている。別れたカップルばかりではないので、私のことを置いて街はいまだに活気があるように感じている。
だから「夕方五時のチャイム」は胸に響くし「街灯の明かり」に帰りを急ぐのだ。
別れてしまったのは「運命」だったってことにして、なんとなく納得してしまいたい気持ちにもなるのだ。


彼女とみるつもりだったのに、別れてしまって一人で見る花火は切なくて切なくて、何年経っても思い出してしまうに違いないと思っている。
人ごみの中に彼女のことを探してしまう。でも、会ったとしたら、どうしたらいいんだろうか。

最後「すりむいたまま」から前向きになって、次の恋に行くのかなと思いながら、空に想いを馳せて。

歌詞から分かるのは、若者の普遍的でありながらも繊細なメンタリティである。
普遍的なところもあるので色んな人に刺さるのだろうと思いながらも、この気持ちの動きがやや繊細で男性的な感じがして、マッチョな男性や女性のカバーは少し違うのかもしれないと思いながら聴いている次第です。


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大人になって味わう「Butter-Fly」

初代デジタルモンスターOP「Butter-Fly」は大人の味か?

皆さんはButter-Flyという曲を知っているだろうか。
初代デジモンアドベンチャーのオープニング曲である。
この記事をどのくらいの世代の方が見てくださっているのかは分からない。
読んでいる人がいるのかどうかも分からないのだが、30代前半から20代後半(2022年8月現在)の皆様の多くは校歌か何かのように口ずさむことが出来る。
何なら校歌を口ずさむことはできなくとも、おジャ魔女カーニバルとButter-Flyは口ずさめる方が多いはずだし、カラオケで唄う同級生を目にしたことが一度ならずあるはずである。

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アニメ「平家物語」を観た

アニメ平家物語は家族の呪いと未来が見えていても生きていく物語

アニメ平家物語を観ました。

いわゆる最近のアニメの絵柄ではなく、少し懐かしい様な新しいような絵柄で、平安時代後期の雰囲気が表現されていて毎回楽しみでした。
詳しい人物相関やあらすじは作品や各種まとめで確認してください

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現在の忍ぶ恋?の歌三選

現代社会において隠すべきものではないのかもしれない。
素直に気持ちを表現することのほうが素晴らしく、祝福されるべきことなのかもしれない。

しかし、誰にも打ち明けることのできない内に秘めた恋心には、言い知れぬ奥ゆかしさがあり、それを美しいと捉える感性が日本にも昔から存在していたようである。

 

万葉集にも

 

”夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ”

 

と夏の茂みにひっそりと咲く姫百合と自分の忍ばなくてはならぬ恋心を重ね合わせた大伴坂上郎女の歌があります。

 

現代の歌においても忍ぶ恋の歌詞があります。

自分の記憶に残っている歌詞を3つ紹介します。
平安時代などの忍ぶ恋は身分などによって表に出せない気持ち等を表現したものですが、現代においては拡大解釈して好きだと上手く言えない感情を歌った曲も選んでみました。
切なさや奥ゆかしさなどを表現したという点では似たような良さがあると思います。

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「竜とそばかすの姫」を観た

先日、「竜とそばかすの姫」観てきた。
高校生の頃、「時をかける少女」を見て以来、細田作品は必ず映画館で見るようにしている。
「竜とそばかすの姫」を観た後、少し寂しい気持ちになりました。
賛否が分かれていることは知っていました。
鈴の気持ちだけに沿って物語を見ると、母を失った悲しみから周りの助けを得て成長していくストーリーとして、音楽や演出の素晴らしさもあっていいなーと思えます。
しかし、竜の気持ちに沿って行くと、良く分からない。私の理解力不足かもしれないけれども。
竜が最終的に救われたのか疑問で、映画自体が良かったと思えた人はおそらく救われたと考えているのでしょうから、竜のような本当に孤独な人の気持ちを良かったと思った人は理解できないのかと少し寂しくなりました。

また、竜がベルを引き立てるだけの装置であり薄っぺらく感じました。

ここまでネタバレにならないように少し誤魔化してきましたが、以下ネタバレを含みますので閲覧注意です。
また、映画を観ていることを前提に話すので、細かいことの説明は省きます。

一度しか見ていないので、理解の及んでいないところに関しては御容赦願います。

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「常夜燈/PEOPLE1」の歌詞について考えてみた

かわいい女の子がダンスを踊るPVは何かと話題になる。


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PEOPLE1の「常夜燈」も例にもれず、女の子がダンスを踊るアニメーションで本当にかわいい。スマホを想起させる画面割とか面白いと思う。
女の子のPVに注目が集まりがちであるが、僕は皆さんが歌詞についてどんな感想を持っただろうか。
僕は正直よくわからなかったのだが、PVのかわいさに誤魔化されている不穏な何かを感じたのだ。
何せ歌詞の冒頭が“天国に学校はあるかしら”である。
私の解釈を聞いていただきたい。

ぜひご覧になったことのない方には見ていただきたい。


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どうだろうか、曲の明るさみたいなものもあって、女の子が本当にかわいく見える。
歌詞を見てみよう。

 天国に学校はあるかしら
ふらつく足で見つけたのは
古い映画の悲しい結末 oh oh oh

皆は君の 君は神様のせいにする ah
その神様の歌声は
今じゃよくあるコンビニの放送 oh oh oh

みんな優しさを受容して
そっと心に釘を打つの
期待はずれの夜を抜けて oh

この世界には 未来がキラキラと
みえる人もいるというの
それならば 食えぬものなど置いていかなくちゃ
例えばこんな胸の常夜燈も

才能って一体何だろうね
ブランコを漕ぐ ah みたいな日々が
何気なく君に色を差す oh oh oh

いつか大人になるのならば
忘れたことも思い出そう
そんな努力もしてみよう um um um

そんな些細な妄想で
胸の爆弾は軽くなるの
先延ばしの朝を迎えて oh

この世界では 人をだましたり
モノを盗んではいけないというの
それならば 欲しいものなど君にあげるよ
例えばこんな胸の常夜燈も

この世界には 未来がキラキラと
みえる人もいるというの
それならば 食えぬものなど置いていかなくちゃ

臆病な自尊心に 匿われて目覚めたのは
あの頃の僕らだ
いつか大人になるのならば
欲しいものなど君にあげるよ
例えばこんな胸の常夜燈も

歌の歌詞には必ずしも意味があるとは限らない。
しかし、言葉に意味がある以上は推察したくなるのが人のサガである。

僕がこの曲の歌詞を読んで感じるのは、人生を諦めている子が人生の見方を変えてくれるような存在に出会って少し気が楽になって、人生は続いていくみたいなストーリーです。
曲調も映画のEDのようで、大団円感があります。

 

主人公はいじめられていて自殺を考えているような子か病気で学校に行けてないような子ではないかと思います。
とは言いましたが、それは大げさで、生きる意味なんて感じなくてもう死んでもいいって感じているような子かもしれません。
だから「天国に学校はあるかしら」と天国にも学校があるかどうか気にしていて、天国行ってまで学校に行くことを嫌がっているのか、行けなかった学校に行きたいと思っているのではないでしょうか。
それから、「期待外れの夜を抜けて」と「先延ばしの朝を迎えて」は「常夜燈」というタイトルからも気になる歌詞です。
「期待外れの夜」というのは、主人公は人生に対して後ろ向きなのでこのまま朝が来なければいいと期待するけれど「抜けて」と結局朝が来てしまい、人生を「先延ばし」にしていく「朝」を迎えるといった意味合いなのかなと思います。
夜を長く過ごしたいので主人公には常夜燈が必要です。

 

もう一人歌詞の中には「君」が出てきます。
「君」は主人公が出会った「未来がキラキラと見える人」だと思います。(「人もいるというの」という表現が少し気になりますが。)
「君」のような人に出会って人生悪くないと思えたから、「君」と行きたいと思えたから、後ろ向きで「食えぬ」夜を過ごすための「心の常夜燈」は置いて朝を迎えたい。
「君」はみんなが君のせいだといっても神様のせいにできる。つまり自分を責めて生きるようなことはしません。
また主人公は「才能」について考えているときに「君に色を指す」と言っているので、なんとなく「君」何か才能といえるようなものを感じているのではないかと思いました。
だから、「君」が「未来がキラキラと見える人」なのではないかと考えました。
そんな人と生きる世界で今を考えずに死後のことに想いを馳せるなんてナンセンス、ずっと明日が来なけりゃいいなんて考えは食えないのです。

 

こんな後ろ向きだった感情も君と大人になって行くにつれて忘れていくことができるかもしれません。
それでも、主人公は後ろ向きだった感情も自分だったと受け入れていつか思い出して味わうことができればいいなと唄っているのではないかというのが私の解釈です。
どこにも歌詞の内容について明言されてないので私の完全な妄想ですし、すっ飛ばしている歌詞もあります。はっきり説明がついてないなと思う部分もあります。

 

ちなみに、「君は神様のせいにする」の神様と聞いて最初に思い浮かんだのは「フォークの神様ボブ・ディラン」です。
「今じゃよくあるコンビニの放送」はセブンイレブンでよく流れているこれを思い浮かべました。


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だから、「君」は何か音楽の趣味がある。中高生特有の古い洋楽聴いててかっこよく見える他の同級生とかとは違う雰囲気を持った人なのかと考えました。
何かこの感じエモさありませんか。

 

聴いた感じが観たことないきれいに終わった映画のエンディングのような幸福感があって好きだなと思います。
また、前向きな曲調ですが、いつか大人になることを些細な”妄想“と言う、世界がキラキラとみえる人もいる(=自分にはみえない)と言うなど歌詞に影があったり、何について唄っているのか曖昧な部分もあって少しつかみどころがなかったりするのも魅力だなと感じました。